連載45 記録に見る日本のスキー競技史
1923年、日本のスキー競技ははじまった
1994年(平成6年)
第72回全日本スキー選手権大会
アルペン | :青森県大鰐町大鰐温泉スキー場(技術系) |
:北海道白滝村北大雪スキー場(スピード系)※中止 | |
ノルディック | :北海道札幌市大倉山ジャンプ競技場/宮の森ジャンプ競技場 |
白旗山距離競技場 |
■アルペン
種目 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
男子 滑降 |
悪天候のため中止 | ||
女子 滑降 |
悪天候のため中止 | ||
男子 スーパーG |
悪天候のため中止 | ||
女子 スーパーG |
悪天候のため中止 | ||
男子 大回転 |
伊東 秀朗(ロシニョール) 1:06.57/1:01.36 2:07.93 |
押切 敬司(ヤマハ) 1:06.43/1:01.84 2:08.27 |
川口 城二(道東海大) 1:06.58/1:01.97 2:08.55 |
女子 大回転 |
内田 真希(東海大四高) 1:03.30/1:01.96 2:05.26 |
石川 恵(柏木農高) 1:02.56/1:02.90 2:05.46 |
上村 文代(ライオン堂) 1:04.00/1:01.76 2:05.76 |
男子 回転 |
押切 敬司(ヤマハ) 43.15/44.76 1:27.91 |
山本 治(西沢SC) 42.93/44.99 1:27.92 |
伊東 秀朗(ロシニョール) 42.69/45.28 1:27.97 |
女子 回転 |
廣井 法代(湯沢高) 51.42/51.93 1:43.35 |
池田 和子(ロシニョール) 51.77/52.78 1:44.55 |
大久保 優(飯山南高) 54.28/53.59 1:47.87 |
スピード系は2年振りに白滝村で開催される予定だったが、季節外れの強い低気圧の影響で大荒れとなりすべての競技がキャンセルとなった。技術系はリレハンメルオリンピックに出場した選手が不参加だったため、優勝争いは混沌とした。男子回転は、招待選手でワールドカップのトップシーンで活躍したディディエ・シュミット(FRA)が1本目2位の伊東秀朗に0秒97の大差をつけて貫禄を示した。レースは1本目6位だった押切敬司が1秒43差をひっくり返して大逆転優勝を飾った。
当時のジャパンチームAランク選手
男子 木村公宣
■ノルディックコンバインド
順位 | 選手名 | 所属 | 飛躍点 | 距離タイム |
---|---|---|---|---|
1 | 荻原 健司 | 北野建設 | 221.5(1) | 41:18.6(3) |
2 | 河野 孝典 | 野沢温泉SC | 200.5(2) | 43:03.1(8) |
3 | 荻原 次晴 | 北野建設 | 162.0(5) | 40:36.7(1) |
ジャパンチームのトップメンバーによるレベルの高い争いとなり、ジャンプでリードを奪った荻原健司がクロスカントリーでもタイム差を計算して余裕の優勝を飾った。クロスカントリーのラップタイムは荻原の弟、次晴だった。
当時のジャパンチームAランク選手
荻原健司・河野孝典・阿部雅司・古川純一・荻原次晴・森 敏
■クロスカントリー
種目 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
男子 10km C |
佐々木一成 (北野建設)26:00.0 |
畔上 大地 (中大)26:28.4 |
竹田 良和 (日大)26:58.2 |
男子 15km F |
佐々木一成 (北野建設)40:39.9 |
大嶋 次郎 (イセト紙工)41:19.0 |
渡辺 博文 (イセト紙工) 41:23.8 |
男子 30km C |
佐々木一成 (北野建設)1:23:31.8 |
渡辺 博文 (イセト紙工)1:25:28.7 |
岡本 英男 (東京美装)1:25:53.2 |
男子 50km F |
佐々木一成 (北野建設)2:08:35.6 |
渡辺 博文 (イセト紙工)2:10:33.6 |
蛯沢 克仁 (中大) 2:10:38.3 |
男子 リレー |
中央大学 1:47:32.7 |
日本大学 1:48:37.8 |
陸自冬戦教 1:49:03.6 |
女子 5km C |
青木富美子 (真室川高教)14:48.6 |
横山寿美子 (日大)15:21.5 |
五十嵐陽子 (弘果SRC)15:35.5 |
女子 10km F |
青木富美子 (真室川高教)29:42.0 |
横山寿美子 (日大)31:00.1 |
古川紀美栄 (陸自冬戦教)31:56.8 |
女子 15km C |
青木富美子 (真室川高教)46:15.2 |
横山寿美子 (日大)48:29.6 |
佐藤 雪野 (日大)48:56.8 |
女子 30km F |
青木富美子 (真室川高教)1:28:18.3 |
高橋 涼子 (日大)1:30:43.6 |
古川紀美栄 (陸自冬戦教)1:31:14. 5 |
女子 リレー |
日本大学 1:00:45.5 |
旭川大学高校 1:03:11.7 |
陸自冬戦教 1:03:12.3 |
佐々木一成、青木富美子の男女両エースがともに四冠に輝き、力の違いを見せつけられた大会となった。佐々木は3度目の四冠。今大会では、リレハンメルオリンピック直後の開催で、ノルディックコンバインドが2大会連続して金メダルを獲得して大人気となり、普段はギャラリーが少ない白旗山が札幌オリンピック以来の8500名が詰めかけた。
当時のジャパンチームAランク選手
女子 青木富美子
■ジャンプ
順位 | ラージヒル | 順位 | ノーマルヒル |
---|---|---|---|
1 | 葛西 紀明(地崎工業) 121.5m/135.0m 279.7 |
1 | 桜井 仁 (たくぎん) 91.0m/77.5m 207.5 |
2 | 西方 仁也(雪印乳業) 117.5m/118.0m 235.9 |
2 | 竹内 元康(東洋実業) 81.5m/84.0m 198.5 |
3 | 岡部 孝信(たくぎん) 119.5m/111.0m 235.9 |
3 | 佐々木孝元(地崎工業) 82.5m/81.5m 195.5 |
リレハンメルオリンピックの代表に決まっている(LHは1月30日に開催)葛西紀明が、前日に行われたHTB杯でも127メートルの大ジャンプで勢いに乗り、1本目121.5メートルと2位に大きく差をつけ、2本目は向かい風に乗って135メートルと当時としては記録的な飛距離をマークして圧勝した。リレハンメル後の3月3日に行われたノーマルヒルは、ただ一人五輪代表の桜井仁(大会には出場していない)が出場、1本目、大差となるK点越えの91メートルを飛び、2本目失敗したが逃げ切った。桜井は全日本初優勝。
当時のジャパンチームAランク選手
原田雅彦・葛西紀明・東 輝・岡部孝信・安崎直幹・西方仁也
第14回全日本フリースタイル選手権大会
会場:長野県飯山市 斑尾高原スキー場
種目 | 男子 | 得点 | 女子 | 得点 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
バレエ | 1 | 生沼 英幸(港区MFF) | 20.85 | 1 | 田中由香子(港区MFF) | 23.25 |
2 | 長谷川宏太郎(港区MFF) | 19.20 | 2 | 近藤有希子(順天堂大) | 20.60 | |
3 | 山本 修(氷上郡スキー協会) | 16.95 | 3 | 福本 望 (藻岩高) | 17.95 | |
モーグル | 1 | 原 大虎(エクストリーム) | 24.20 | 1 | 里谷 多英(東海大四高) | 19.55 |
2 | 三浦 豪太(エスビー食品) | 24.11 | 2 | 高倉 陽子(NISEKO) | 16.90 | |
3 | 伊藤 篤(ニセコB&J)) | 23.23 | 3 | 飛鷹 祥子(スノードルフィン) | 14.99 | |
エアリアル | 1 | 石川 浩(スカーゼ) | 120.44 | 1 | 岩崎 彰子(FS少年団) | 102.12 |
2 | 荒瀬 裕基(スカーゼ) | 116.68 | 2 | 岩渕千代子(エクストリーム) | 105.45 | |
3 | 安藤 和明(ダイワ精工) | 102.62 | 3 | 大竹 文子(浦和アミィ) | 102.28 |
リレハンメルオリンピックでモーグル11位と健闘した里谷多英が、テクニックの違いを見せつけて余裕で優勝を飾った。
当時のジャパンチームAランク選手
女子バレエ 田中由香子
第17回冬季オリンピック大会
ノルディック
開催国:ノルウェー(NOR)
開催地:リレハンメル(Lillehammer)
■ジャンプ
NH | 5/葛西 紀明 98.0m/93.0m 259.0 |
8/西方 仁也 99.0m/94.0m 208.9 |
9/岡部 孝信 95.0m/95.5m 206.8 |
55/原田 雅彦 92.0m/54.5m 125.5 |
---|---|---|---|---|
LH | 4/岡部 孝信 117.0m/128.0m 243.5 |
8/西方 仁也 123.5m/110.0m 218.3 |
13/原田 雅彦 122.0m/101.0m 199.9 |
14/葛西 紀明 110.0m/109.5m 196.1 |
団体 | 2/西方・岡部・葛西・原田 956.9 | |||
代表 | 須田 健仁・斉藤 浩哉・桜井 仁 |
■ノルディックコンバインド
個人 | 2/河野 孝典 239.5 |
4/荻原 健仁 231.0 |
10/阿部 雅司 207.0 |
19/古川 純一 220.5 |
---|---|---|---|---|
団体 | 1/河野・阿部・荻原 733.5 | |||
代表 | 三ヶ田礼一 |
■クロスカントリー
男子10km C | 25/佐々木一成 26:21.1 |
31/堀米 光男 26:36.2 |
40/今井 博幸 26:48.8 |
72/神津 正昭 28:20.2 |
---|---|---|---|---|
男子パシュート | 18/佐々木一成 1:04:00.5 |
27/堀米 光男 1:05:07.0 |
42/今井 博幸 1:07:19.8 |
54/神津 正昭 1:07:19.8 |
男子30km F | 19/堀米 光男 1:17:49.4 |
20/今井 博幸 1:18:03.7 |
39/佐々木一成 1:20:52.1 |
48/長浜 一年 1:22:24.9 |
男子50km C | 24/佐々木一成 2:16:51.7 |
28/今井 博幸 2:17:55.2 |
48/長浜 一年 2:22:30.2 |
|
男子リレー | 14/今井・長浜・佐々木・神津 1:49:42.1 | |||
女子5km C | 26/青木富美子 15:41.9 |
50/横山寿美子 16:30.5 |
||
女子パシュート | 16/青木富美子 44:08.4 |
36/横山寿美子 46:56.0 |
||
女子15km F | 11/青木富美子 43:01.5 |
36/横山寿美子 46:00.4 |
||
女子30km C | 26/青木富美子 1:32:22.3 |
45/横山寿美子 1:37:14.7 |
ノルディックコンバインド団体戦は、出場した3選手がワールドカップで常に上位を占めているメンバーで構成され、得意のジャンプで3選手が揃え2位のノルウェーに5分7秒という大差で悠々逃げ切った。
しかし、団体より先に行われた個人戦では、風の向きが一定せず、とくに日本チームの飛躍のときに追い風となる不運が襲いかかった。ワールドカップでは圧倒的な飛距離で後半は余裕を持って逃げ切っていた荻原は、誰の目から見ても「金メダル確実」だった。その荻原に追い風が容赦なく襲いかかり、ジャンプは6位に終わり、クロスカントリーで2人を追い抜くのが精一杯だった。河野孝典はジャンプ4位からクロスカントリーでノルウェーのビークと最後まで銀メダル争いを見せ、ゴール前で競り落として銀メダルを獲得した。
ジャンプ団体は銀メダルを獲得し、札幌オリンピック以来3個のメダルを獲得した。
■アルペン
種目 | 順位/選手名 | |||
---|---|---|---|---|
男子 滑降 |
不参加 | |||
男子 回転 |
18/木村 公宣 1:07.97 |
19/石岡 拓也 1:10.34 |
棄権/平澤 岳 | 棄権/岡部 哲也 |
男子 大回転 |
26/木村 公宣 2:58.50 |
|||
男子 スーパーG |
33/木村 公宣 1:36.38 |
棄権/石岡 拓也 | ||
男子 複合 |
棄権/木村 公宣 | 棄権/石岡 拓也 | ||
女子 滑降 |
21/川端 絵美 1:38.29 |
|||
女子 回転 |
不参加 | |||
女子 大回転 |
棄権/川端 絵美 | |||
女子 スーパーG |
24/川端 絵美 1:23.90 |
|||
女子 複合 |
17/川端 絵美 3:18.22 |
期待の男子スラロームには木村、石岡、岡部、平澤の4選手がエントリーされたが、スラロームバーンはスタートが急斜面でハードなアイスバーンと非常に難しく、しかも74旗門と体力の限界を越えるセッティングがなされた。このタフな条件に、18位と健闘した木村以外は、残念ながら惨敗という結果になった
惜しかったのは男子複合で、木村、石岡はスラロームしだいで8位以内入賞が見えていた。とくに木村は、1本目6位につけ2本目も素晴らしい滑りを見せて優勝したラッセ・チュース(NOR)に中間タイムで0.3秒差と期待を持たせたが、ゴール前10旗門目でコースアウトしてしまった。
フリースタイル
種目 | 男子 | 女子 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
モーグル | 27 | 三浦 豪太 | 20.15 | 11 | 里谷 多英 | 23.18 |
エアリアル | 20 | 待井 寛 | 153.53 | 不参加 |
エアリアルがこの大会から採用された。里谷多英は予選をプレッシャーのかかる1番でスタート、実力を十分に発揮して10位で通過、決勝は8位以内入賞を狙って積極的に攻めたが上位進出することはできなかった。しかし、報告書の中で当時の大槻譲ヘッドコーチは「里谷は11位に終わったが長野オリンピックでは十分戦えると確信した」と評価している。
(本文の敬称略)