連載48 記録に見る日本のスキー競技史
1923年、日本のスキー競技ははじまった
1997年(平成9年)
第75回全日本スキー選手権大会
アルペン | :岐阜県朝日村 | 鈴蘭高原スキー場(技術系) |
:長野県白馬村 | 八方尾根スキー場(スピード系) | |
ノルディック | :北海道名寄市 | 名寄ピヤシリシャンツェ/健康の森CCコース(NC) |
:北海道札幌市 | 大倉山ジャンプ競技場(LH) | |
フリースタイル | :長野県飯山市 | 斑尾高原スキー場 |
スノーボード | :群馬県片品村 | 尾瀬戸倉スキー場 |
■アルペン
種目 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
男子 滑降 |
滝下 靖之(ミズノ) 1:25.71 |
田島あづみ (小賀坂SC)1:27.74 |
ワタベ タケフミ (不明) 1:29.21 |
女子 滑降 |
LARIONOVA Anna (RUS) 1:17.70 |
鈴木 彩乃 (双葉女子高)1:18.91 |
山川 純子 (日大) 1:19.10 |
男子 スーパーG |
滝下 靖之 (ミズノ)1:21.30 |
佐藤 久哉 (デサント)1:22.80 |
林 護 (近大)1:22.84 |
女子 スーパーG |
LARIONOVA Anna (RUS)1:10.21 |
鈴木 彩乃 (双葉女子高)1:10.69 |
石田真理奈 (中京大)1:11.34 |
男子 大回転 |
佐藤 久哉(デサント) 1:03.53/1:04.59 2:08.12 |
皆川賢太郎(日体大) 1:03.72/1:04.97 2:08.69 |
下村 泰則(道東海大) 1:04.62/1:05.34 2:09.96 |
女子 大回転 |
柿坂 理沙(長野日大高) 1:07.76/1:04.78 2:12.54 |
斉藤 由美(歌志内高) 1:06.66/1:06.74 2:13.40 |
野木 真実(専大) 1:06.88/1:06.88 2:13.76 |
男子 回転 |
皆川賢太郎(日体大) 44.65/44.52 1:29.17 |
伊藤 大助(前橋スキー連) 45.59/44.56 1:30.15 |
伊藤 薫(トーエネック) 46.29/44.19 1:30.48 |
女子 回転 |
滝下 樹理(札幌商高) 48.73/46.96 1:35.69 |
石田真理奈(中京大) 49.34/47.15 1:36.49 |
関 理奈(志賀高原SC) 48.55/48.00 1:36.55 |
全日本選手権が鈴蘭高原で開催されたのははじめて。男子回転では幅の広いコースを無駄のない滑りで優勝したのは日本体育大学の皆川賢太郎だった。1本目、大差のラップタイムをマークして逃げ切った皆川は、これが全日本初優勝となった。スピード系は、堅いバーンにコースアウトする選手が続出、本命の富井剛志もコースアウトする中、来年の長野オリンピック代表候補である滝下靖之が2種目を圧勝した。スーパーG3位のワタベ・タケフミは、FIS大会のため英文表記になっており漢字と所属先は不明。
当時のジャパンチームAランク選手
男子 木村公宣
女子 池田和子
■ノルディックコンバインド
順位 | 選手名 | 所属 | 飛躍点 | 距離タイム |
---|---|---|---|---|
1 | 富井 彦 | 雪印乳業長野 | 230.5(4) | 44:19.6(7) |
2 | 富井 正樹 | 雪印乳業長野 | 232.0(3) | 44:46.0(9) |
3 | 高沢 公治 | 中央大学 | 239.5(1) | 45:37.5(12) |
トップ選手である荻原健司ら世界選手権出場組は出場しなかったが、長野オリンピックの代表という目標がある若手選手の激しい争いが展開された。とくに優勝した富井彦は、期待されながらこれまで成績を出すことができなかったが、ジャンプ、クロスカントリーとも安定した成績でまとめて期待に応えた。5位に終わった坂大徹(大山体協)は、ジャンプ23位から素晴らしい走りを見せてクロスカントリーで2位に20秒もの大差をつけて後半1位、トータル5位と大躍進した。
当時のジャパンチームAランク選手
荻原健司・荻原次晴・大竹太志
■クロスカントリー
種目 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
男子 10km C |
今井 博幸 (NTT信越)27:37.1 |
蛯沢 克仁 (川田工業)28:18.7 |
堀米 光男 (志賀高原)28:19.2 |
男子 複合 |
今井 博幸 (NTT信越)1:07:56.0 |
堀米 光男 (志賀高原)1:08:40.1 |
福士 鎮顕 (冬戦教) 1:09:08.0 |
男子 30km C |
今井 博幸 (NTT信越)1:33:42.7 |
蛯沢 克仁 (川田工業)1:36:23.2 |
佐藤 威 (北野建設)1:37:18.2 |
男子 50km F |
今井 博幸 (NTT信越)2:03:41.4 |
畔上 大地 (イセト紙工)2:08:03.8 |
島田 武彦} (日大) 2:08:52.0 |
男子 リレー |
冬戦教 2:13:34.8 |
日本大学 2:15:55.8 |
近畿大学 2:16:39.5 |
女子 5km C |
青木富美子 (真室川R)16:00.7 |
横山寿美子 (北越銀行)16:14.7 |
大高 友美 (日大)16:26.6 |
女子 複合 |
青木富美子 (真室川R) 49:39.6 |
横山寿美子 (北越銀行)50:48.6 |
高橋 涼子 (冬戦教) 51:01.9 |
女子 15km C |
青木富美子 (真室川R) 53:19.0 |
古澤 緑 (弘果SRC)53:49.1 |
青木 那緒 (冬戦教) 53:59.2 |
女子 30km F |
青木富美子 (真室川R)1:24:44.6 |
横山寿美子 (北越銀行)1:26:02.9 |
佐藤 雪野 (日大)1:26:32.5 |
女子 リレー |
冬戦教 1:12:42.4 |
リクルート 1:12:46.5 |
日本大学 1:13:06.4 |
世界選手権大会及びワールドカップ参戦組は、シーズン後半の全日本選手権で疲れの残る中、今井、青木とも四冠に輝いたのは賞賛に値する。しかも2位とのタイム差も大きく、技術代表の高橋誠一は「他の選手は大会の前にすでに諦めの心が働いているのではないか?」と国内残留組に厳しく報告している。
当時のジャパンチームAランク選手
女子 青木富美子
■ジャンプ
順位 | ラージヒル | 順位 | ノーマルヒル |
---|---|---|---|
1 | 原田 雅彦(雪印乳業) 123.0m/119.5m 240.0 |
1 | 岡部 孝信(雪印乳業) 93.0m/90.0m 257.5 |
1 | 安崎 直幹(NTT北海道) 119.5m/123.0m 240.0 |
2 | 東 輝 (ニッカウイスキー) 91.0m/86.0m 245.0 |
3 | 須田 健仁(東京美装) 116.0m/121.0m 225.6 |
3 | 東 和広 (日本空調) 91.0m/84.0m 239.5 |
名寄ではじめた開催されたノーマルヒルで原田雅彦がジャンプ台記録となる94m(従来は92m)を飛んで初開催に花を添えた。ワールドカップ参戦組を前に東兄弟が2位、3位と大健闘して、会場を沸かせた。大倉山で行われたラージヒルでは、原田、安崎直幹が1位を分けるというめずらしい記録となった。
当時のジャパンチームAランク選手
船木和喜・岡部孝信・斉藤浩哉・原田雅彦
第17回全日本フリースタイル選手権大会
種目 | 男子 | 得点 | 女子 | 得点 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
アクロ | 1 | 1 |
小島 慶太(菅平高原)
モーグルは悪天候(濃霧)のため予選は何度も中断する厳しい運営を余儀なくされた。結局、決勝がキャンセルとなり、予選の結果を決勝記録とした。
当時のジャパンチームAランク選手
女子アクロ 田中由香子
第3回全日本スノーボード選手権大会
種目 | 男子 | 得点 | 女子 | 得点 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
GAL | 1 | 中村 基嗣(ミナミスポーツ) | 2:11.15 | 1 | 内山 康恵(水上SC) | 2:20.09 |
2 | 橋本 朝臣(ホクトスポーツ) | 2:12.31 | 2 | 降旗 洋子(北野建設) | 2:21.66 | |
3 | 後藤 友樹(秋田SBC) | 2:12.64 | 3 | 上島しのぶ(PSA) | 2:21.94 | |
HP | 1 | 石橋 一 (片品SC) | 70.2 | 1 | 金田由紀子(PSA) | 41.2 |
2 | 石川 健二(PSA) | 68.3 | 2 | 武山 香里(アメリカン) | 38.4 | |
3 | 西田 崇 (PSA) | 67.5 | 3 | 上田ユキエ(ファンクション) | 38.3 |
アルペンのトップ選手、飯田圭、ハーフパイプの渡辺伸一ともけがのためリタイアしたが、世界で力をつけてきたジャパンチームの男女の有力選手が順当に上位を占め、オリンピック初開催となる来年の長野へ向けて、「レベルの高い試合となった」と当時のスノーボード部長、佐々木峻が報告している。
当時のジャパンチームAランク選手
男子ハーフパイプ 渡辺伸一 西田 崇
FIS世界選手権大会
ノルディック
開催国:ノルウェー(NOR)
開催地:トロンハイム(Trondheim)
■ジャンプ
NH | 2/原田 雅彦 99.0m/98.0m 258.5 |
4/船木 和喜 95.5m/94.0m 256.0 |
8/斉藤 浩哉 94.0m/96.0m 252.5 |
12/岡部 孝信 93.0m/93.5m 247.0 |
---|---|---|---|---|
LH | 1/原田 雅彦 124.0m/128.0m 252.1 |
10/船木 和喜 117.5m/119.0m 230.2 |
11/斉藤 浩哉 113.5m/122.5m 228.3 |
12/岡部 孝信 123.0m/112.0m 227.0 |
団体 | 2/船木・岡部・原田・斉藤 905.0 | |||
代表 | 葛西紀明・須田健仁 |
■ノルディックコンバインド
個人 | 1/荻原 健司 232.0 |
34/荻原 次晴 182.5 |
40/大竹 太志 25.5 |
55/上野 隆 170.0 |
---|---|---|---|---|
団体 | 9/荻原次・上野・大竹・荻原健 865.0 |
■クロスカントリー
男子10km C | 22/蛯沢 克仁 25:19.5 |
39/神津 正昭 26:05.3 |
54/今井 博幸 26:20.7 |
棄権/堀米光男 |
---|---|---|---|---|
男子パシュート | 21/蛯沢 克仁 1:04:01.6 |
34/神津 正昭 1:05:15.5 |
59/今井 博幸 1:07:00.3 |
|
男子30km F | 39/神津 正昭 1:10:01.1 |
49/堀米 光男 1:11:23.9 |
51長浜 一年 1:11:44.2 |
55/今井 博幸 1:12:21.5 |
男子50km C | 15/蛯沢 克仁 2:24:35.6 |
16/今井 博幸 2:24:38.1 |
60/長浜 一年 2:37:41.5 |
61/神津 正昭 2:38:36.8 |
男子リレー | 14/蛯沢・今井・堀米・神津 1:44:58.9 | |||
女子5km C | 27/青木富美子 14:18.6 |
48/大高 友美 14:42.6 |
53/横山久美子 14:57.5 |
62/横山寿美子 15:04.8 |
女子パシュート | 31/青木富美子 42:17.7 |
43/横山久美子 43:01.9 |
53/大高 友美 44:28.4 |
棄権/横山寿美子 |
女子15km F | 23/横山久美子 39:40.5 |
28/青木富美子 39:52.2 |
38/横山寿美子 40:20.8 |
51/佐藤恵美子 41:09.9 |
女子30km F | 29/青木富美子 1:30:37.4 |
30/横山寿美子 1:30:56.4 |
棄権/佐藤恵美子 | |
女子リレー | 15/大高・青木・横山久・横山寿 1:02:13.0 |
選手団の宿舎は、港に停泊した1万トンクラスの船2隻。船室のため部屋は狭く、しかも窓が開閉できない上、揺れがあることで馴染めずコンディションを狂わせた選手もいたようだ。大会は、ノルディックコンバインドの団体が、92アルベールビル五輪、94リレハンメル五輪、95サンダーベイ世界選手権に続いて4大会連続金メダルの金字塔を打ちたてた。荻原健司は唯一4大会金メダル獲得にエースとして出場し、原動力となった。
ジャンプの原田雅彦は、オリンピック、世界選手権大会を通じてラージヒル初の金メダリストとなった。このときのジャンプ部長は、現在、競技本部長の笠谷幸生である。
■アルペン
開催国:イタリア(ITA)
開催地:セストリエール(Sestrieres)
種目 | 順位/選手名 | |||
---|---|---|---|---|
男子 滑降 |
33/富井 剛志 1:54.99 |
|||
男子 回転 |
棄権/木村 公宣 | 棄権/平澤 岳 | ||
男子 大回転 |
21/川口 城二 2:58.23 |
棄権/浦木 健太 | ||
男子 スーパーG |
44/富井 剛志 タイム不明 |
|||
女子 滑降 |
不参加 | |||
女子 回転 |
29/池田 和子 1:51.62 |
31/柏木久美子 1:54.93 |
棄権/廣井 法代 | |
女子 大回転 |
棄権/池田 和子 | 棄権/廣井 法代 | 棄権/柏木久美子 | |
女子 スーパーG |
35/柏木久美子 1:29.36 |
男子大回転で、川口城二は難しい大きな起伏とネジレがあるコースで21位と、日本選手が苦手とするこの種目で健闘した。しかし、期待した回転では、木村公宣、平澤岳とも2本目にコースアウトして結果を残すことができなかった。
フリースタイル
開催国:日本(JPN)
開催地:長野(Nagano)
種目 | 男子 | 女子 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
アクロ | 19 | 長谷川宏太郎 | 13.65 | 4 | 田中由香子 | 25.00 |
17 | 福本 望 | 19.80 | ||||
18 | 伊地智麻子 | 19.25 | ||||
モーグル | 11 | 原 大虎 | 23.50 | 15 | 里谷 多英 | 16.41 |
14 | 附田 雄剛 | 22.84 | 16 | 上村 愛子 | 13.67 | |
26 | 三浦 豪太 | 22.13 | ||||
27 | 森 徹 | 22.07 | ||||
エアリアル | 26 | 安藤 和明 | 97.15 | 15 | 岩渕千代子 | 146.22 |
22 | 逸見 佳代 | 121.94 |
長野五輪のプレ大会として開催された日本開催初の世界選手権大会。オリンピック種目ではないアクロで田中由香子が4位とメダルまでもう一歩だった。このシーズン、モーグルチームははじめてワールドカップの全戦出場を果たした。しかし、その強行遠征の影響もあってか、世界選手権大会では原大虎の11位が最高だった。モーグルに出場した森徹は、大会出場後、長野五輪の出場を目指していたが大病を患い、戦列を離脱した。辛い闘病生活の中でも必死に選手復帰を夢見て病魔と戦ったが、長野オリンピックを見届けた後の同年7月4日、午前2時20分、静かに天に召されていった。
当時、チームメイトだった現在のモーグルチームのメンバー、里谷多英、上村愛子、附田雄剛たちは一瞬たりとも「森徹」を忘れたことはない。
ちなみに、徹さんのお兄さんはノルディックコンバインドで活躍した敏(さとし)さんである。
1998年のメディアガイドより。森徹選手は、この年のメディアガイドが最後の紹介になってしまった
スノーボード
開催国:イタリア(ITA)
開催地:サンキャンディド/イニチェン(San Candido/Innichen)
種目 | 男子 | 女子 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
HP | 12 | 西田 崇 | 36.5 | 10 | 武山 香里 | 41.6 |
37 | 綿谷 直樹 | 30.9 | 22 | 田谷 綾子 | 17.2 | |
40 | 曽根 和広 | 29.5 | 24 | 山口 利美 | 16.3 | |
42 | 渡辺 伸一 | 29.0 | 27 | 上田ユキエ | 15.9 | |
37 | 本吉 里子 | 10.0 | ||||
PSL | 41 | 後藤 友樹 | 21.34 | 16 | 箭木 孝美 | 23.85 |
45 | 小嶋 久幸 | 21.93 | 18 | 内山 康恵 | 21.93 | |
46 | 飯田 圭 | 22.29 | 23 | 町田 祥子 | 25.44 | |
60 | 深田 寛之 | 25.44 | 25 | 熊谷 昭美 | 26.13 | |
GSL | 41 | 中村 基嗣 | 2:26.76 | 22 | 上島しのぶ | 2:32.65 |
43 | 小嶋 久幸 | 2:29.60 | 36 | 町田 祥子 | 2:39.90 | |
50 | 後藤 友樹 | 2:29.60 | 37 | 内山 康恵 | 2:42.69 | |
60 | 飯田 圭 | 2:41.39 | 39 | 立石 直 | 2:45.15 | |
41 | 杉森 清美 | 2:46.98 | ||||
SL | 44 | 後藤 友樹 | 1:20.32 | 20 | 箭木 孝美 | 1:19.20 |
48 | 飯田 圭 | 1:21.24 | 22 | 内山 康恵 | 1:24.41 | |
59 | 深田 寛之 | 1:21.63 | 23 | 町田 祥子 | 1:27.55 | |
棄 | 小嶋 久幸 | 24 | 立石 直 | 1:30.98 | ||
棄 | 中村 基嗣 | 棄 | 熊谷 昭美 | |||
SBX | 13 | 後藤 友樹 | 1:20.32 | 不参加 | ||
33 | 飯田 圭 | 1:21.24 | ||||
失 | 小嶋 久幸 |
アルペン系種目は、まだまだ世界との差は大きく、将来を見据えて大回転を中心に多くの選手を送り込んだ。ハーフパイプは、確実に世界との差を詰めており、男子の西田崇、女子の武山香里は長野五輪の入賞は十分狙える位置にレベルアップした。
(本文の敬称略)