2009/07/09

連載49 記録に見る日本のスキー競技史
1923年、日本のスキー競技ははじまった

1997年(平成9年)

第76回全日本スキー選手権大会

 

アルペン :群馬県片品村 尾瀬岩鞍スキーリゾート(技術系)
:岩手県雫石町 雫石スキー場(スピード系)
ノルディック :北海道札幌市 大倉山ジャンプ競技場/宮の森ジャンプ競技場
白旗山クロスカントリー競技場
フリースタイル :福島県猪苗代町 猪苗代スキー場/リステルスキーファンタジア
スノーボード :新潟県湯沢町 苗場スキー場

 

■アルペン

種目 1位 2位 3位
男子

スーパーG①

滝下 靖之

(ミズノ)  1:30.33

富井 剛志

(野沢温泉SC)1:30.53

田島あすみ

(小賀坂SC)1:31.69

女子

スーパーG①

佐藤 未佳

(東海大四高)1:29.19

竹田 未央

(専大)   1:29.26

西下 賀恵

(東女体大)1:29.41

男子

スーパーG②

滝下 靖之

(ミズノ)  1:27.41

田島あすみ

(小賀坂SC)1:28.22

大瀧 徹也

(近大)  1:29.12

女子

スーパーG②

佐藤 未佳

(東海大四高)1:28.02

西下 賀恵

(東女体大)1:29.09

竹田 未央

(専大)   1:29.26

男子

大回転

皆川賢太郎

(日本体育大)2:22.40

浦木 健太

(ノルディカ)2:22.42

石岡 拓也

(トーエネック)2:23.72

女子

大回転

廣井 法代

(神立高原)2:16.73

柏木久美子

(小樽スキー連盟)2:18.41

柿坂 理沙

(長野日大高)2:18.80

男子

回転

平澤 岳

(志賀高原)1:40.33

皆川賢太郎

(日本体育大)1:40.55

伊藤 薫

(トーエネック)1:41.79

女子

回転

山川 純子

(日大) 1:40.73

柿坂 理沙

(長野日大高)1:43.82

関 理奈

(志賀高原)1:43.88

同大会2日目のトレーニングで、オリンピックに出場したばかりの木村公宣がコース脇の雪だまりに突っ込んで激しく転倒、靱帯を断裂する大けがを負った。一時は、選手復帰は難しいという情報が流れ、関係者にとってもマスコミ陣にとっても衝撃を与えた事故だった。木村はこの後、驚異的な回復ぶりを見せて再びレーシングピステに戻った。

 

当時のジャパンチームAランク選手

男子 木村公宣

 

■ノルディックコンバインド

順位 選手名 所属 飛躍点 距離タイム
上野 隆 東京美装 229.5(1) 44:14.3(16)
北村 隆 近畿大学 205.0(6) 41:59.5(3)
山田 和由 トーエネック 204.0(7) 42:10.2(5)

上位はベテラン、中堅選手で占め、10位以内にジュニア選手が1人も入ることができず、技術代表の高畠啓博はスキー年鑑の報告で「コンバインドの将来を考えると、とても残念な結果だった」と報告している。

 

当時のジャパンチームAランク選手

荻原健司・森 敏・富井 彦・大竹太志

 

■クロスカントリー

種目 1位 2位 3位
男子

10km C

今井 博幸

(NTT信越)28:22.9

堀米 光男

(志賀高原)29:15.8

岡本 英男

(東京美装)29:41.0

男子

複合

今井 博幸

(NTT信越)1:11:13.9

岡本 英男

(東京美装)1:12:02.7

神津 正昭

(東京美装)1:12:15.9

男子

30km C

今井 博幸

(NTT信越)1:31:46.7

神津 正昭

(東京美装)1:33:56.3

竹田 良和

(川田工業)1:35:44.8

男子

50km F

今井 博幸

(NTT信越)2:12:33.1

東本 仁

(高田自衛隊)2:18:11.7

神津 正昭

(東京美装)2:18:13.1

男子

リレー

冬戦教A

2:00:35.9

東京美装

2:03:29.3

冬戦教B

2:04:06.1

女子

5km C

大高 友美

(日大) 15:11.0

青木富美子

(真室川R) 15:16.8

村木真紀子

(弘果SRC)15:17.7

女子

複合

横山寿美子

(北越銀行)45:27.1

古澤 緑

(弘果SRC)45:47.7

若井 涼子

(日大)   45:49.4

女子

15km C

村木真紀子

(弘果SRC)47:47.6

大高 友美

(日大)   47:52.6

渡辺 明美

(冬戦教) 47:56.3

女子

30km F

古澤 緑

(弘果SRC)1:33:10.5

横山久美子

(守谷商会)1:34:47.3

若井 涼子

(日大)  1:35:59.6

女子リレー 冬戦教A

1:06:28.3

日本大学

1:06:34.8

弘果SRC

1:07:25.7

3月23日~30日のシーズン終わりの大会ということで融雪の心配があった中で開催された。大会終了後、技術代表の高橋誠一は「これまでワールドカップ組が参加できる3月下旬に開催してきたが、雪の条件、参加選手の集中力、ワールドカップ組の疲労回復の要素を満たした大会ではなかった。今後の目標として全日本選手権、SAJ公認大会とコンチネンタルカップを連動した流れで開催する必要がある」と示唆している。

 

当時のジャパンチームAランク選手

なし

 

■ジャンプ

順位 ラージヒル 順位 ノーマルヒル
原田 雅彦(雪印乳業)

119.0m/125.0m 243.2

原田 雅彦(雪印乳業)

89.5m/89.5m 234.0

斉藤 浩哉(雪印乳業)

113.5m/116.5m 215.0

西方 仁也(雪印乳業)

87.0m/88.5m 225.5

岡部 孝信(雪印乳業)

108.0m/112.5m 195.9

岡部 孝信(雪印乳業)

83.5m/84.0m 206.0

原田雅彦が圧倒的な強さノーマルヒル、ラージヒル2種目を制覇した。2種目の表彰台がすべて「雪印チーム」で独占するというめずらしい記録も誕生した。オリンピック直前の開催ということもあって、両種目とも気合いの入ったジャンプは見応え一杯だった。

 

当時のジャパンチームAランク選手

原田雅彦・船木和喜・葛西紀明・岡部孝信・宮平秀治・斉藤浩哉

 

第18回全日本フリースタイル選手権大会

種目 男子 得点 女子 得点
アクロ 1 長谷川宏太郎(港区MFF) 24.00 1 福本 望 (順天堂大) 22.30
2 小島 慶太(菅平高原SC) 21.80 2 若山かほり(飯山市SC) 21.50
3 山本 修 (氷上郡S協) 21.75 3 田中由香子(ゴールドウイン) 21.45
モーグル 1 三浦 豪太(エスビー食品) 25.57 1 堀江寿美代(藤野バンパイア) 20.30
2 原  大虎(エクストリーム) 23.86 2 畑中みゆき(HOT&CRAZ) 16.32
3 遠藤 淳平(ニセコB&J) 22.71 3 今野 越奈(白馬村SC) 16.17
デュアルモーグル 1 石田 浩(TEAM DV8) 1 湯沢 幸子(TEAM DV8)
2 伊藤 篤(NISEKO B&J) 2 堀江寿美代(藤野バンパイア)
3 菊地 大拙(チームバンプス) 3 佐藤 奈穂(エキップFSC)
エアリアル 1 中西 拓 (白馬村SC) 152.07 1 岩渕千代子(札幌学院大) 137.37
2 待井 寛 (チームリステル) 144.73 2 千田 直美(白馬村SC) 76.33
3 荒瀬 裕基(チームリステル) 135.74

オリンピックの直後の開催で、金メダルを獲得した里谷多英、7位入賞の上村愛子を見ようと、会場にはこれまで最高の1500人のギャラリーが詰めかけ、報道陣も多数訪れた。しかし、両選手は体調不良により出場しなかった。それでも、オリンピックで金メダルを獲得してから当時としては目新しいモーグルを見ようと訪れた観客は、優勝した三浦豪太、堀江寿美代の温かい拍手を送っていた。

この大会ではじめてデュアルモーグルが採用された。

 

当時のジャパンチームAランク選手

男子モーグル 附田雄剛

女子モーグル 里谷多英

女子アクロ  田中由香子

 

第4回全日本スノーボード選手権大会

HP1西田 崇 (PSA)69.61吉川 由里(ユーピーSP)不明

種目 男子 得点 女子 得点
GAL 1 後藤 友樹(秋田SBC) 1:25.74 1 長谷川美穂(野辺山) 1:14.94
2 川口 晃平(上川高) 1:28.99 2 降旗 洋子(やぶはら) 1:42.84
3 橋本 朝臣(ホクトスポーツ) 1:29.25 3 飯田 蘭 (筑波大学) 1:44.53
SL 1 後藤 友樹(秋田SBC) 1:20.89 1 降旗 洋子(やぶはら) 1:32.37
2 大日方俊之(シェルツSBC) 1:22.72 2 柴田真理子(ホクトスポーツ) 1:33.09
3 マスオカ コウイチ 1:22.84 3 長谷川美穂(野辺山) 1:33.30
2 石橋 一 (片品SC) 65.6 2 不明 不明
3 渡辺 伸一(アメリカン) 62.0 3 不明 不明

女子のハーフパイプは、スキー年鑑に収録されておらず2位、3位は不明。アルペン種目の先駆者、後藤友樹が2種目とも圧倒的なタイム差で2冠を達成、ハーフパイプも西田、吉川と両トップ選手が順当に優勝を飾った。

 

当時のジャパンチームAランク選手

女子ハーフパイプ 吉川 由里

 

第18回冬季オリンピック大会 NAGANO

ノルディック
■ジャンプ

NH 2/船木 和喜

87.5m/90.5m 233.5

5/原田 雅彦

91.5m/84.5m 228.5

7/葛西 紀明

87.5m/84.5m 221.5

9/斉藤 浩哉

86.5m/83.0m 213.5

LH 1/船木 和喜

126.0m/132.5m 272.3

3/原田 雅彦

120.0m/136.0m 258.3

6/岡部 孝信

130.0m/119.5m 250.1

47/斉藤 浩哉

100.0m 79.5

団体 1/岡部・斉藤・原田・船木 933.0
代表 宮平秀治・須田健仁・吉岡和也

 

■ノルディックコンバインド

個人 4/荻原 健司

+1:21.1

6/荻原 次晴

+1:25.3

23/古川 純一

+4:15.7

38/森  敏

+7:07.9

団体 5/荻原次・森・富井 彦・荻原健 +2:07.3

 

■クロスカントリー

男子10km C 19/今井 博幸

28:51.5

29/神津 正昭

29:23.1

34/蛯沢 克仁

29:30.0

36/堀米 光男

29:44.8

男子パシュート 21/蛯沢 克仁

1:10:10.0

22/堀米 光男

1:10:11.1

24/神津 正昭

1:10:23.9

28/今井 博幸

1:10:55.0

男子30km C 24/今井 博幸

1:40:40.9

27/蛯沢 克仁

1:40:48.0

42/長浜 一年

1:42:58.7

56/神津 正昭

1:48:15.3

男子50km F 30/今井 博幸

2:16:49.5

32/堀米 光男

2:17:09.2

33/長浜 一年

2:17:24.4

39/蛯沢 克仁

2:18:52.5

男子リレー 14/蛯沢・今井・堀米・神津 1:43:06.7
女子5km C 25/横山寿美子

18:55.1

31/青木富美子

19:04.8

46/大高 友美

19:28.8

50/横山久美子

19:34.5

女子パシュート 25/横山寿美子

48:41.2

29/青木富美子

49:21.7

46/横山久美子

50:44.0

48/大高 友美

50:58.9

女子15km C 24/横山寿美子

50:55.3

34/横山久美子

51:48.7

37/青木富美子

51:53.7

54/佐藤恵美子

54:11.1

女子30km F 32/横山寿美子

1:32:04.3

38/古澤 緑

1:33:16.2

39/横山久美子

1:33:19.7

女子リレー 10/大高・横山寿・青木・横山久 58:22.8

ジャンプの団体は、皆さんご存じのように1本目終了後、激しい雪で中断し、2本目キャンセルの可能性もあった。この場合、1本目の成績で競技が成立するため、2本目キャンセルとなった場合、日本は4位に終わっていた。ゲームを続行できるかどうかは、テストジャンパーを飛ばし、支障がないことを確認してジュリーが判断することになる。ここで日本のテストジャンパーは、吹雪で視界が利かない中、恐怖と戦って必死のフライトを展開、ゲームが開催できることをジュリーにアピールして2本目開催にこぎつけた。その結果、4選手がともにベストフライトを見せて大逆転で金メダルを獲得した。

終了後、マスコミはテストジャンパーの勇気あるフライトに「5人目の金メダリスト」と讃えた。

 

クロスカトリー男子リレーで、日本チームはクロスカントリー史上初の入賞(7位)を果たし、世界への足がかりをつかんだ。

 

■アルペン

種目 順位/選手名
男子滑降 17/富井 剛志

1:52.62

男子回転 13/木村 公宣

1:52.15

20/平澤 岳

1:55.24

21/石岡 拓也

1:55.69

男子大回転 25/木村 公宣

2:46.35

29/石岡 拓也

2:49.51

男子スーパーG 24/富井 剛志

1:37.86

男子複合 不参加
女子滑降 不参加
女子回転 17/池田 和子

1:37.29

20/山川 純子

1:38.10

24/柏木久美子

1:40.46

女子大回転 25/池田 和子

3:00.71

27/廣井 法代

3:01.91

29/山川 純子

3:03.95

女子スーパーG 36/柏木久美子

1:21.89

女子複合 16/山川 純子

2:50.36

オリンピック開催直前のワールドカップで3位入賞した木村公宣への期待は大きく、マスコミも関係者も猪谷千春以来のメダル獲得へ日増しにトーンアップ。木村は必死にプレッシャーと戦ったが、当日の早朝、ホテルの窓から「けっぱれ! 公宣」ののぼりを持った弘前からの大応援団を見てプレッシャーはピークに達してしまった。根が生真面目な木村は、「応援してくれる人たちのために」という責任感から、プレッシャーに押しつぶされてしまった。

1本目、ゴールエアリアで見ていた木村の恩師、東奥義塾高校の川村勝儀は、緊張のため体がまったく動いていない木村の滑りをモニターで見て、頭を抱えてしまった。ミックスゾーンから出てきた木村の顔は青ざめていた。

 

フリースタイル

種目 男子 女子
モーグル 13 三浦 豪太 23.06 1 里谷 多英 25.05
15 原  大虎 12.13 7 上村 愛子 23.79
18 附田 雄剛
30 坂本 豪大
エアリアル 23 安藤 和明 不参加

里谷多英の金メダル獲得は、オリンピック会場全体に、衝撃的なシーンとして伝わった。ジャンプのメダル獲得はある程度予測できたものの、モーグルの金メダルはおろかメダル獲得はノーマークに近かった。しかも、高校生で出場した上村愛子も7位入賞したことで、一般の人には馴染みの薄かったモーグルの解説を含めて、テレビ、新聞とも連日大特集を組んだ。モーグルが市民権を得た瞬間でもあった。

 

スノーボード

種目 男子 女子
ハーフパイプ 28 西田 崇 33.4 20 吉川 由里 24.9
30 高垣 誠人 32.2 22 武山 香里 22.7
34 渡辺 伸一 29.1
36 今井 孝雅 24.4
パラレルGS 不参加 15 上島しのぶ 2:28.05

オリンピックに初採用された記念すべき大会。レベル差の大きいアルペン系は、女子の上島しのぶ(現在AL/SBXチームのチーフコーチ)1人で、ハーフパイプに重点を置いて挑んだ。しかし、地元開催のプレッシャーからか、オリンピック開催前(1月17日)、ワールドカップのイニチェン(ITA)で開催された大会で日本選手初優勝を飾った吉川由里も、期待に応えることは出来なかった。しかし、ただ1人アルペン系で参加した上島しのぶは、15位と健闘、これがチームのベストランキングだった。

 

(本文の敬称略)