競技
2017/10/02【REPORT 第3回フリースタイル競技モーグル種目
タレント発掘育成事業合宿】
9月11日から18日まで、福島県猪苗代において、第3回フリースタイル競技モーグル種目タレント発掘育成事業合宿が開催され、タレント発掘事業対象の強化指定選手、男女4名が参加しました。ウォータージャンプトレーニングを中心としたこの合宿は、前回7月に開催した合宿同様に、「ジャンプ(エア)技術を洗練・向上させること」、「基礎運動能力を開発し、向上させること」、「基礎体力を向上させること」を目的に行ないました。とくに、本合宿に参加した選手は8月にオーストラリアで雪上トレーニングを行なっていたことから、ジャンプトレーニングでは雪上でのエアの成果を振り返り、さらにジャンプの質を洗練させることを中心に取り組みました。
ジャンプトレーニングとしては、前回同様回転とひねりの基礎技術を習得するために、トランポリンの基礎技術を日本体操協会専務理事の山本宜史氏に指導していただきました。エアに有効な体の締め方、ひねりや回転を始めるタイミングなどをより深く体に浸透させられるよう、繰り返しトレーニングを行いました。
翌日の午前中は、トランポリンで得た空中感覚をモーグルのジャンプにつなげることを意識しながらウォータージャンプを行い、午後には再度トランポリンで回転とひねりの動きを洗練させました。選手はそれぞれの最高難度の技、男子はコーク10、女子は7までトレーニング。このように実際の競技と連動させながらのトレーニングにより、選手は基礎となる回転・ひねり動作をさらに進化させることができ、その後のジャンプの質と難度を高めることができました。
ジャンプを指導する伊藤コーチ
基礎運動能力を開発するためには、今回はヨガとボルダリングを行いました。ヨガでは胸式呼吸を行いながら、スキーをする際に重要な股関節まわりを動かす動作を繰り返し確認。そうして呼吸と運動の関係を学び、また股関節まわりの柔軟性を獲得するための新たなスキルを知ることができました。
ボルダリングでは正確な重心移動が重要であること、またルートを確保するためには事前にライン取りをどれだけ正確にイメージできるかが重要であることを体感しました。これはスキーに共通する感覚でもあります。選手たちからは、「身体だけでなく頭をフル回転したので、楽しい中にもいつもと違う疲れがあった」という声が聞かれました。
基礎体力を向上させるためのトレーニングとしては、球技やランニングで持久力を高めることと、コンディショニングトレーニングを中心に実施しました。コンディショニングトレーニングでは、大きな負荷をかけず動かせる範囲で関節を積極的に動かして可動域を広げるトレーニングや、疲労が蓄積しないような望ましい身体の使い方を身につけるためのトレーニングを、アスレティックトレーナーである田畑トレーナーと、PTの越野トレーナーが指導。その結果、選手は体調に合わせたトレーニング方法や、自分の体の状況とその課題を再確認することができました。
その他、智を育み思考を深めるために、この合宿においてもいくつか講義が行われました。医科学分野では、越野PTによる「スキーで生じる外傷の基礎と予防」と「ケガとその復帰のプロセス」、「海外遠征に向けてのコンディショニング」の講義、そしてアスリートとしての意識を高めるために、JOCキャリアアカデミーの所氏による「日本代表選手としての心構え」、自己をより深く理解するために中野氏による「自己確認」の講義が行われました。
ケガに関わる越野PTの講義では、スキー選手に多い外傷と、それが起こる状況や姿勢、そしてケガを予防するために選手が出来ることの理解に努めました。さらに、万が一ケガをした場合も適切な処置、リハビリを行うことで、十分競技に復帰できること、そしてその具体的な事例を確認しました。
このように今回の合宿では、9月の雪上トレーニングに向けてジャンプの質を向上させ、そしてアスリートとしての心・技・体・智を高めることができました。
フリースタイル競技モーグル種目タレント発掘育成事業は、スポーツ振興くじの助成を受けて実施しています。今後も数度にわたる国内合宿、海外遠征が予定されています。本事業は「Learn to compete」という 「国際競技会で競うことを学ぶ年代」に必要な心・技・体・智を獲得すること、そしてアスリートとして、ひとりの人として豊かな人間性を獲得することを目指し、今後も選手に様々な刺激を与えていきます。
文責:フリースタイル部ヘッドコーチ 斗澤 由香子