競技

2017/08/15

【REPORT 第2回フリースタイル競技モーグル種目
タレント発掘育成事業合宿】

集合写真1

 

 2017年7月23日から31日まで、福島県猪苗代において、第2回フリースタイル競技モーグル種目タレント発掘育成事業合宿が開催され、同事業対象の強化指定選手、男女5名が参加しました。本合宿のテーマは、「ジャンプ(エア)技術を洗練・向上させること」、「基礎運動能力を開発し、向上させること」、「基礎体力を向上させること」、そして「自分を知り、自分に必要なものと進むべき方向を確認すること」の4つとしました。

 それを踏まえ、選手たちにより具体的な目標をふたつ設定しました。ひとつは「ジャンプを中心にモーグル専門技術を洗練させ向上させること」、もうひとつは「技術練習と体力トレーニングを両立させ、双方の質と量を高めること」です。

 

◆トランポリントレーニング

 

 

 第2回目となる本合宿は、1回目の合宿から3日後という短い間隔で実施されました。まず、ジャンプトレーニングではその空中演技を洗練させるために、トランポリンの基礎技術トレーニングを導入しました。指導は2008年北京、2012年ロンドン夏季オリンピックの代表監督で、現日本体操協会専務理事の山本宜史氏にお願いしました。モーグルと同じく採点種目であるトランポリンは、見せる・魅せることが重要です。そこで山本氏には技をかけやすくするためだけでなく、美しく見せる・魅せるために必要な細かな点を指導いただきました。

 

◆山本先生のトランポリン指導

 

 

 

 具体的には、自分の身体を頭の先からつま先まで自分でコントロールすること、身体のどこをポイントに締めるかということ、ひねり始めのタイミングや視線の位置はどうするのかといったことなど、モーグル選手が身につけるべきトランポリン動作の基礎的な動きを指導していただきました。次々と進む課題に選手は集中力を切らさず果敢に挑戦、練習しました。そして次回合宿までの宿題を課されて、トレーニングが終了。選手からは「ひねりやすくなった」、「空中での身体の使い方がわかった」などの声が挙がりました。さらに、選手への声がけのタイミングや内容、課題の変化のさせ方など、指導者にとっても山本氏のコーチング手法を学ぶ貴重な機会となりました。

 

◆ウォータージャンプのトレーニングを行う小山選手

 

 

 そして、ウォータージャンプトレーニングではこのトランポリンの動きを溶け込ませ、ジャンプの質と難度を高めることに挑戦しました。とくに自分がイメージする動きと現実の動きを合致させることを中心にトレーニング。3名の技術コーチは映像を活用しながらも選手との対話を中心にすることを心がけ、選手の新しい視点や気づきとなるよう声をかけていました。その成果は、最終日の競技会形式のトレーニングに現れ、選手はそれぞれのベストジャンプを披露。選手にとって技術の進歩のみならず、心理的に大きな自信獲得が進んだことがうかがえました。

 

◆伊藤、新井両コーチのフィードバックを受ける西沢選手

 

 

 

 もうひとつの設定目標である「技術練習と体力トレーニングを両立させ、両方の質と量を高めること」を実現するために、朝6時からの有酸素トレーニングに始まり、技術トレーニング、午後の体力トレーニングの3部練習としました。具体的には、前回に引き続きビッグスリーの正しいフォームの獲得をめざすフリーウェイト、ストップ&ダッシュ、バランスボールトレーニング、心拍数をコントロールしての有酸素トレーニングを行いました。さらにバレーボールやフットサルなども取り入れ、かなりハードなスケジュールでしたが、遠山、田畑両トレーナーが、各選手の体重や心拍数、食事、睡眠状態などのコンディションを日々確認して、トレーニング負荷と量をコントロールしながら実施しました。

 

◆ウェイトのフォーム指導を受ける宮本選手

 

 いろいろな身体の使い方や動きを身につけられるよう異なるスポーツを取り入れ、ゲーム形式にして心理的に飽きないようにし、そして技術練習に余計な疲労が残らないよう考慮したプログラミングとなりました。これは技術指導のコーチ陣とフィジカル担当トレーナー、そしてケア担当トレーナーの情報共有の結果であり、充実し、バランスのとれた技術・体力トレーニングが実現しました。おかげで選手たちは疲れたなかでも最大限に有効な体力強化が実現できたはずです。また、選手個々が地元に帰ってトレーニングする際に、どのレベルまで自分がトレーニングできるのかを知ることができた点は、大きな収穫と言えるでしょう。

 

◆基礎トレーニングのひとつ台跳び

◆ウォーミングアップのフットサル

◆クロストレーニングのひとつヨガ

 

 

 その他、智を育むために、理学療法士の三浦先生に運動器チェックや形態測定、さらには解剖学の講義をしていただき、筋肉の名前とその場所を実際に自分の身体で確認しながら学びました。これは自分の身体をより深く理解することで、ケガなどの治療を受ける際に、自分でしっかりと説明するためのトレーニングでもあります。心理学の吉田先生には、前回の心理テストのフィードバックやイメージトレーニングの実施方法を具体的に指導いただき、ウォータージャンプの技術トレーニングと連動させました。

 

◆三浦先生の解剖学講義

◆吉田先生による「本気で信じる」トレーニング演習

 

 

 その後、伊藤、新井両コーチとの個別面談から、今シーズンの個々の選手目標を確認し、その進むべき方向や方法を検討しました。遠山、田畑両トレーナーとは、体力測定の結果を踏まえ今後のトレーニング方法(目標とする量と負荷)とトレーニング環境整備を検討しました。このように、選手は専門家とのディスカッションを通じて目標を確認し、目標達成のために自分に必要なものや進むべき方向を見つめるという「自分を知る」作業を続けることができました。簡単に答えが出ない難しい作業ではありますが、今後も続けることが大切であり、常に自問自答することが重要であると考えます。

 

◆大野コーチのフィードバックを受ける小山選手

 

 

 本合宿では、当初に設定した「ジャンプを中心にモーグル専門技術を洗練させ向上させること」、「技術練習と体力トレーニングを両立させ、双方の質と量を高めること」のふたつの目標を、選手の誠実な取り組みとスタッフの献身的なサポートで実現することができました。そして思わぬ効果となったのが、本合宿ではウォーミングアップの球技や様々なアクティビティを通じて、選手やスタッフがチームとして本格的に機能し始めたように感じられたことです。それは技術や心理、トランポリン、理学療法士、アスレティックトレーナなどの専門家がプロフェッショナルな技術のみならずそのスピリットを余すことなく合宿に、そして愛情を持って選手へと注ぎ込んでくださり、それに選手が十分呼応したことで、素晴らしい化学反応を起こした結果だと感じています。

 

 フリースタイル競技モーグル種目タレント発掘育成事業は、スポーツ振興くじの助成を受けて実施しています。前回の第1回を皮切りに3月まで、国内合宿5回、海外遠征が3回、予定されています。本事業は「Learn to compete」というテーマのもと、 「国際競技会で競うことを学ぶ年代」に必要な心・技・体・智を獲得すること、そしてアスリートとして、ひとりの人として豊かな人間性を獲得させることを目指し、今後も選手に様々な刺激を与えていきます。

 

集合写真2

 

 

文責:フリースタイル部ヘッドコーチ 斗澤 由香子