競技

2017/12/04

【REPORT 第4回フリースタイル競技モーグル種目タレント発掘育成事業合宿】
オフシーズンの成果をいざ雪上で!

 2017年11月10日から12日まで北海道・札幌において、第4回フリースタイル競技モーグル種目タレント発掘育成事業合宿が開催され、選手5名が参加しました。今回の合宿は、雪上トレーニング期に向けて、コンディショニングやジャッジングに関する知識を身につけ実践すること、そして体力測定を実施することで7月から励んできたトレーニングの成果を測り、今後の指標を得ることを目標に実施しました。

 

集合1

トレーニング機器が充実している札幌国際大学トレーニングルームにて

 

 

 選手たちはドーピング教育や心理講習、栄養講習、ジャッジング講習、そしてメディカルの講習を受講。そして、コーチやトレーナー、心理、栄養、そしてドクターといった専門家と、選手個別のミーティングを行いました。その結果、試合期でそれぞれの選手が抱える個々の課題解決に向け、より踏み込んだオーダーメイドのサポートが叶えられました。

 

ミーティング1

コーチ、トレーナーと個別ミーティングを行い、試合期の目標と達成に向けての課題を確認する

 

 

 まずドーピング教育ではドーピング行為が許されない理由を考え、うっかりドーピングを予防するための具体方法、薬を摂取するにあたって注意する点など、注意を払うべき事柄を学びました。

 ジャッジ講習では実際にジャンプの点数をつけることで、どこが見られているのかを体験として理解を深めました。

 以前から継続して行われている栄養講習と心理講習では、これからの試合期においてそれぞれ試合に向け、海外での生活に向け、最高のパフォーマンスを発揮するための準備について学びました。とくに栄養講習では、アスリートの基本食として推奨される低脂肪高炭水化物食を、実際にどのように選ぶと良いのか、試合の直前・直後に推奨される食事方法を具体的にいつ、どこで、どのくらいの量を食べたら良いかなどの情報を手に入れることができました。あとはそれぞれの選手が身体の様子に合わせて実践するのみです。また、栄養指導として、最近3日間の食事を前回の合宿時に提出したものと比較し、食生活の改善点の確認を行いました。そして、今後さらに洗練させるために何が必要かをフィードバックしてもらいました。

 

 

ミーティング3

管理栄養士の松井先生と個別ミーティング。食事の課題を確認し、より強くなるための食事戦略を構築する

 

 

 また心理学でも同様に、講義をとおして試合前のイメージの作り方や、試合当日に意識することを考えました。個別に30分ずつのミーティングを行い、試合で自分にどのように声がけをするのか、試合の日に何をルーティーンとして行うのかなどを、吉田先生の問いかけのサポートを得ながら考えを深め、実践プランを構築しました。

 

ミーティング2

スポーツ心理の吉田先生と個別ミーティング。自分の試合パターンを振り返り、ルーティーンを構築する

講義1心理

吉田先生の心理学講義

 

 渡邉ドクターによるメディカル講習では、特に脳震とうについての理解を深めました。エアトリックの難度が増すようになり、モーグル競技における脳震とうの怪我は増加しています。しかしながら、その危険性については選手のみならず指導者、保護者も未だ理解が深まっていないのが実情です。脳震とうが実は生命にも関わる重大なケガであることを理解し、予防だけでなく、もし起きた場合の対処方法や予後について学びました。

 

ミーティング4

渡邉ドクターによるメディカルチェックと個別ミーティング。身体の課題を確認する

メディカルチェック

問診に続いての診察。必要な場合は後日病院での検査となる

 

 

 体力測定では、7月に測定した項目を再度測定し、その変化を見ました。測定結果から伸び率が十分でなかったものもあれば、十二分に成果が見られたものもありました。体力はパフォーマンスの一側面で、技術を下支えするための重要な要素の一つです。この結果がどのようにパフォーマンスに結びつくかは、今後、雪上で選手自身が体験し、確認することになります。トレーナーからのフィードバックにより、選手は今後シーズンをとおして今の体力を維持することが必須であり、項目よっては向上させることができることを理解しました。

 

 

体力測定1

ハイパワーを計測する

体力測定2

脚筋力を測定する

 

 

 そして理学療法士のトレーナーにより、7月同様、関節の可動域や筋の柔軟性の確認が行われました。身体を正しく使えることは怪我を予防すると同時に、力の出力を高めることにつながり、その結果パフォーマンスを高めることになります。このように選手は自分の身体の様子を、体力は数値から、身体の動きはトレーナーの評価から客観的に知ることができました。今後、これらをさらに改善してパフォーマンスに生かしていくために、現場で指導するコーチやトレーナーの指導のもと、その方法を個々で模索していくこととなります。

 

クールダウン

トレーニング後のクールダウンも、一連の流れができた

柔軟性

柔軟性を高めるストレッチ

 

 

 

 そして前回の7月の合宿から、これで4回の国内合宿と1回の遠征をこのチームとして過ごし、選手とスタッフは互いに理解が深まりコミュニケーションが増え、チームとしての機能が高まってきています。このチームのスローガンは、「日本代表としての自覚や人間性を高め、 感謝の気持ちを忘れず、 強い意志を持ち、 一人一人が限界を超えられるように、 チーム全体で支え合う」です。

 いよいよシーズンとなり雪上中心の季節が始まります。選手はフリースタイル競技のモーグルを愛し、オリンピックでのメダル獲得という夢を追いかける同士です。このスローガンを体現すべく、チームは11月27日よりカナダへ第2次遠征に出発し、雪上トレーニングを行った後、FIS大会に参戦します。

 

マットスイッチ

パワーの指標としてジャンプ力を測る

体力測定のフィードバック

7月の測定データを比較して、その成果を振り返る

 

 

 フリースタイル競技モーグル種目タレント発掘育成事業は、スポーツ振興くじの助成を受けて実施しています。今回の合宿を含め3月まで、国内合宿5回と海外遠征3回が予定されています。本事業は「Learn to compete」という 「国際競技会で競うことを学ぶ年代」に必要な心・技・体・智を獲得すること、そしてアスリートとして、ひとりの人として豊かな人間性を獲得することを目指し、今後も選手に様々な刺激を与えていきます。

 

報告:フリースタイル部ヘッドコーチ 斗澤 由香子