競技

2013/02/26

【REPORT フリースタイル】FISワールドカップ猪苗代大会
フリースタイルの聖地3シーズンぶりのワールドカップ

静かに戦いが始まるのを待つ世界屈指の難コース

 

 2月23日(土)、24日(日)の2日間、福島県猪苗代町・リステルスキーファンタジアにて、「2013FISフリースタイルスキーワールドカップ福島猪苗代大会 」が開催され、モーグル、デュアルモーグルの激戦が展開された。

 会場となったリステルスキーファンタジアは、90年代より毎年のようにフリースタイルスキーワールドカップの舞台であり続け、2009年には世界選手権も開催された“フリースタイルスキーの聖地”。ジャパンチームの選手たちにとっては馴染みの深い、いわばホームともいえるスキー場だ。諸事情により、この2シーズンほどワールドカップカップの開催は見送られていたが、今回、3年ぶりの復活となった。東日本大震災の被災地でもある福島県で、ふたたびワールドカップが行われることは、同地の復興ぶりを世界にアピールできるという意味でも意義深いものだった。

 日本からは、伊藤みき(北野建設スキークラブ)、上村愛子(北野建設スキークラブ)、村田愛里咲(北翔大学)、星野純子(チームリステル)、市村美樹(中京大学)、岩本憧子(中京大学)、伊藤さつき(立命館大学)、水谷夏女(サミースキークラブ)、遠藤尚(忍建設スキー部)、西伸幸(白馬村スキークラブ)、四方元幾(愛知工業大学)、小林樹生(白馬村スキークラブ)、吉川空(倶知安スキー連盟)、山口卓也(白馬村スキークラブ)、三原大暉(富山FSC)、鈴木健太(AP山形)、森山素直(TEAM BANKEI)、堀島行真(池田中学校)の女子8選手、男子10選手の計18選手がエントリーした。

 

その中で伊藤みき選手がみごと初優勝を遂げた

多くのファンの声援に応える伊藤みき選手

 

 
日本モーグル界の功労者、里谷多英&附田雄剛による涙のラストラン

 初日、モーグル。日本チーム女子は村田(1位)、上村(2位)、市村(13位)、星野(14位)、岩本(15位)と5選手が、男子は吉川(7位)、西(11位)の2選手が予選突破(カッコ内は予選順位)。女子の健闘が目だち、なかでも岩本選手は、ワールドカップ初出場にして決勝進出という注目に値する実績を作った。

 この日、決勝が行われるまでのインターバルに、特別なプログラムが用意されていた。長野オリンピック金メダリストにしてソルトレーク五輪銅メダリストでもある里谷多英選手、世界選手権表彰台やワールドカップ優勝経験のある附田雄剛選手の引退セレモニーが行われたのだ。2選手のラストラン、メッセージ、後輩選手たちからの花束贈呈、胴上げと続き、最後に、長い間モーグル界を牽引してきた大ベテラン2人に、大観衆、選手、関係者からの大きな拍手が送られた。

 感動的なセレモニーの余韻が残るなか、決勝がスタート。現行のルールでは、まず、「ファイナル1」として予選を通過した16選手が順番に滑り、1位から16位までの順位を決定。その上位6位までの選手が「ファイナル2(スーパーファイナル)」としてもう一度滑り、最終的な順位を決めるというシステムになっている。

 ファイナル1を突破し、ファイナル2にコマを進めた日本勢は村田、上村の2選手。特に村田選手は予選1位に続き、ここでも2位通過であり、その存在感を強くアピールすることに成功した。だが、ファイナル2では、両選手とも3位以内に入れず、惜しくも表彰台を逃すことになった。なお、優勝は、女子はオードリー・ロビショー選手、男子はミカエル・キングスバリー選手といずれもカナダ勢だった。

 

1994年のリレハンメルオリンピックから5大会連続出場、1998年長野オリンピックでは日本女子として初の金メダルを獲得した里谷多英選手が、その長い競技生活を思い出の地、猪苗代で終えた

里谷選手と同じ、長い間男子チームのリダーとして頑張ってきた附田雄剛選手もラストラン

 

 
ソチ五輪への夢をつなぐ快挙。伊藤みき、ワールドカップ初優勝!

 大会2日目のデュアルモーグルは、まず予選で、モーグルと同様に一人づつ滑って、その採点で決勝進出者を決定(16名)。決勝は2名同時に滑り勝者を決めるレースをトーナメントで行うシステムだ。

 予選通過の日本選手は、伊藤みき選手(2位)、上村選手(5位)、星野選手(14位)、男子が遠藤尚選手(10位)という顔ぶれに。前日、予選落ちした伊藤、遠藤両選手が意地を見せた。

 トーナメントの組み合わせは予選順位により決められるが、日本の3人の女子選手は別々のブロックに分散した。

 まずはエイトファイナル(ベスト16)で星野選手が敗退。上村、伊藤両選手は無難に対戦相手を退けた。とくに伊藤選手の滑りは安定感に加え、力強さを増しており、表彰台獲得を予感させるものだった。

 続くクォーターファイナル(ベスト8)では、上村選手が転倒により格下のミカエラ・マシューズ選手(アメリカ)に敗れるハプニングが。一方、伊藤選手は抜群の安定感で、その時点でワールドカップ総合首位だったジャステン・デュフォー・ラポイント選手(カナダ)を24対11で退ける。

 セミファイナル(ベスト4)も難なくクリアした伊藤選手はいよいよファイナル進出。対戦相手は、クォーターファイナルで上村選手を、セミファイナルで昨シーズンのワールドカップ総合王者ハンナ・カーニー選手に勝っていた伏兵マシューズ選手。まだキャリアの浅いノーマークの新鋭に伊藤選手は、23対11と余裕の勝利。

 ホームゲレンデで念願のW杯初優勝を達成し、ゴールエリアで喜びを爆発させた。これは、里谷選手、上村選手に続く、モーグル日本人女子選手史上3人目となる快挙であるとともに、ソチ五輪に向けて女子の世代交代を印象づける結果となった。

 なお、アメリカのブラッドリー・ウィルソン選手がV。こちらも初優勝だった。