競技
2021/04/30【REPORT 第4回アルペン(セレクション)合宿】U16世代強化の必要性
場所北海道釧路市阿寒湖畔スキー場
日程2021年3月29日~31日
※撮影のために同方向を向いているので一時的にマスクを外している選手もいます。
日本のアルペンスキー競技人口は近年大きく減少していると言われています。しかし他国と比べても決して少ないわけではありません。それにも関わらず世界との差はどんどん開いているのが現状です。コーチ制度やセットのクオリティ、フィジカルレベルの低下、コース難易度等々、挙げればキリがないほど多方面から課題は聞こえてきます。私自身もヘッドコーチとしてこのような課題に意識が向いていた時もありましたが、世界との距離が広がった原因はもっと根本に近いところにあるのではないかと考えた時、私達スキー連盟としての強化体制側に大きな問題があると考えました。
その一つが選手の選考方法です。現場へ足を運ばなければ見えないのが小中学生のポテンシャルです。これまで国内の主要大会の上位者のみでしか国内強化選手を選考できておらず、選手は国内強化選手に選ばれる為に「勝たなければいけない」「失敗してはいけない」と、数少ないタイトルと言われるレースを全力で攻め降りられないような空気がいつしか生まれているように感じていました。
更に、個人差はありますが、女子選手11歳・男子選手13歳のころが成長スパートのピークと言われています。まだまだ体ができていない時期にポイントやリザルトのみで選考することは正しい選考ではありません。スキーテクニックの引き出しの多さや、アルペンに必要な身体の下で板をコントロールするコンパクトな高い次元でのスキー技術、それらが連動するように板をたわませ縦に切り裂くダイナミックな動き、このような能力があっても身体の成長速度によっては、コースのレイアウトや気象条件次第でその能力が活かされない場面が多々あります。
小中学生はFISポイントという実力主義となる前の世代であるため、最も大切な“ポテンシャル”という部分をしっかり見ることで正しい選考ができると考え、可能性にあふれる世代の選手の取りこぼしがないよう、中長期を見据えた選手育成を目指しセレクションを実施致しました。
以前は代表コーチの推薦による選考もあり、そのような選手が結果を残してきた実績もあります。
※撮影のために同方向を向いているので一時的にマスクを外している選手もいます。
この中でも、ある年代をターゲットとした集中的な強化を私は重要と考えており、世界で戦うためには中学生(FISカテゴリに上がる前)からの注力は必須です。その年代をどれだけ早くから育成しFISカテゴリへ上げるかということに大きな意味があります。今回のセレクションにおいても中学生~高校1年生までを特に注視しております。
16歳になると日本代表または世界で戦う為の土俵がFISポイントという実力主義となるため、基本的には基準に則り代表の選考を勝ち抜いて頂きたいと思っています。現在の基準は過去の選考基準と比べても低く設定されているからです。ただしその中でも取りこぼしはあるかもしれません。FISレースを1〜2年を経験した選手たちがその年代に当たります。セレクションでは体重や身長など、年齢ごとに一定のレベルに達しているべき点を考慮しながら選考する可能性がありました。年齢を重ねて行く毎にその可能性は当然低くなっています。
雪上においてはウェーブを造設し、各セクションの処理能力や俊敏生、リカバリーなどもジャッジポイントに入れました。ゲートではアグレッシブさ、板を縦に踏み込める能力、身体の下で板をコントロールできるか等、身体の成長を考慮し将来性と現実的な年齢に対しての能力を見ております。
フィジカルについてもパワーや俊敏性、持久力等を測定する中で、どれだけ自分のパフォーマンスに集中し全力で取り組むことができたのか、そして限界を越えようという姿勢にも注目しました。
また自己分析シートを利用し、自分の目標に対してどれだけ向き合い、考え、プランを立てた中で行動に起こしているのかということを確認させていただきました。
選考された選手は先シーズンまでのほぼ倍の規模になりますが、可能性を大きく広げる手段としてとても大切なことであると確信しています。
今後このシステムが良かったのかは暫く先になってみなければ分からないことです。界基準の選考ができる日本スキー界になっていけるよう、業界全体が今一度世界で勝つことの意味と難しさを理解し、真剣に向き合っていかなければならないと思っています。今後はセレクションもユース選手(U16以下)のみを対象としていけるよう強化を進めて参ります。
報告/アルペン国内ヘッドコーチ 佐々木 明