競技
2013/06/20【REPORT クロスカントリー】2013コーチングセミナー
5年ぶりの開講に全国から120名が参加
6月1日(土)~2日(日)の2日間に渡って、クロスカントリーコーチングセミナーを味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)において開催しました。全国各地から120名のコーチ・選手が集結しましたが、会場収容人員に制限があるため、各都道府県にも人数制限をお願いしなければならず、参加したいのに出来なかった関係者もいたのではと感じており、この場をお借りして心よりお詫び申し上げます。
セミナー開催は、5年振りとなりましたが、過去のセミナーのいずれもクロスカントリー競技の専門分野のみという内容でありましたが、今回は異種目分野の研究者・コーチ等をお招きし、現場のコーチングに生かしてもらう事を目的に1年前から企画検討を始めつつ準備をしてきました。講師選択や内容についても議論を重ねながらでしたが、参加者の皆様からも好評をいただき、開催して良かったと関係者一同感謝しております。
初日の講義1は『筋力トレーニング』と題して神奈川大学の衣笠竜太先生から筋肉と骨格等の基礎的知識、筋力トレーニングの実際について、クロスカントリー競技に必要なトレーニング考察などの講話をいただいた。トレーニング方法の紹介では、今までに取り入れていなかったコーチから多くの質問が飛び交うなど盛大に終了した。
次の講義2では、『身体運動と障害』と題し、杏林大学整形外科医である林光俊先生から講話をいただいた。先生は20年前より全日本男子バレーボールチームの帯同ドクターとして活躍されており、バレーボールに多い障害とその対処法やクロスカントリースキーに多い障害の対処法や正しい身体動作とストレッチの重要性についてお話をいただいた。積極的な質問も多く、講義終了後も控室で列になって質問に対応していただいた事に対し、心より感謝申し上げたい。
続いて講義3はNHK『ミラクルボディー』でも紹介された『長距離ランナーのケニア人と日本人の身体特徴の違い』についての講話をJISS研究員である横澤俊治先生からケニア人ランナーの身体的特徴や形態、ランニング動作分析などを紹介していただき、日本人ランナーとの違いについて特筆すべき決定的な点は無いが、走動作における違いとMRIでのインナーマッスルである大腰筋の発達が異常に大きい事などが挙げられ、また幼少期の遊びの違いなど、これから更に研究を進めていかなければならない側面も沢山あるとの講話をいただき、研究が更に進んだ段階で再度講義をお願いしたいと感じる内容であった。
初日の最後は『クロスカントリー競技と医・科学サポートの現状』というテーマに基づき、各専門委員から運動生理学的側面やスキー動作におけるバイオメカニクス研究、身体的発育に関わる重要性の講義後に現ナショナルチームコーチ及び日本女子界のエースでもあり、世界上位にランクする石田正子選手からもコメントをいただき、その後時間的余裕が無い中でのディスカッションとなってしまったが、『ジュニア期の特に必要なトレーニング方法』などについて意見交換をし終了した。もっと多くのディスカッションをしたいと計画していたが、それが叶わず残念であった。
2日目のセミナーはJOC特別講座と題し、一般応募者も参加する形式となっており、そこに私達スキー関係者も講義に参加させていただき、総勢140名の参加者となった。
講義5は、脳卒中で倒れた元サッカー日本代表チームのオシム監督の執刀医として『ゴッドハンドを持つ男』として世界的評価の高い先生であり、脳活動をスポーツ分野にも利用し、競泳:北島康介選手を金メダルへと導く一助となった。『勝負脳』の著書は有名である。
今回は『勝負脳の鍛え方』と題し、クロスカントリースキー用にプログラムされたものをご紹介していただいた。正に新鮮としか言い様の無い程、脳指令からのアプローチはこのようになっているので心構えや姿勢・考え方を強化し繰り返すことで本番で実力を発揮出来なかった人やいつも失敗していた人が勝負強くなるという講話をいたき、あっという間の90分間であった。
セミナー最後となった講義6は、言わずと知れたロンドンオリンピック競泳ヘッドコーチでもあり、北島康介選手の素質を見抜くと共に金メダリストへと育て上げた平井伯昌コーチの『世界でも通用する選手の育て方』と題しての講話をいただいた。話す口調から、とてもバイタリティーがあり、且つ繊細な方であると直感したが、正しくデータを基に選手と正面から向き合い、心身の両面においての課題を日々克服し、グイグイ引っ張っていくという様子がうかがえた。世界と対等に戦うためには、あらゆる方面から情報を取り入れ、新たな発想や創意工夫が必要とのこと。その姿勢はチーム平井をますます進化させていく平井先生は、やはり超一流のコーチという存在であり、そんな魅力あるところには必然的に世界を目指す国内トップスイマー達が集まってくると感じるのだと感じた。同時に我々クロスカントリースキー界も、もっともっとコーチのスキルアップ・レベルアップを図らなければならないと痛感した講義でもあった。
今セミナーを通じて、我々現場のコーチングが固定概念にとらわれる事なく、常に進化伸展を目指していくための良きカンフル剤となり、新たな発想やアイデアの一助となっていただければ、この上ない喜びと感じています。
今後も皆様方のご期待に沿えるよう、強化委員会活動も更に活発化させていく所存です。今後とも、クロスカントリースキー普及推進事業及び強化事業に対し、深いご理解とご協力をいただけますよう、お願い申し上げます。
最後に、このセミナー事業開催に当たり、裏方となって支えてくれました多くの関係者各位のご尽力があっての賜物と心より感謝を申し上げ、報告とさせていただきます。
クロスカントリー部
強化委員長 石川 英樹