競技

2022/09/22

【REPORT 第4回クロスカントリー競技タレント発掘育成事業合宿】

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U23世界選手権の対象である20歳~22歳の選手を対象とした本年度2回目の強化合宿は、長野県山ノ内町志賀高原と長野県木島平村にて9月6日から19日に行われました。本合宿のねらいは、(1)低強度および高強度インターバルトレーニング(HIIT)による全身持久力の向上(専門運動によるスキー技能向上を含む)、(2)各種ドリルによる基礎運動能力の向上、(3)高所での競技会に向けた順応のチェック、(4)競技会参加を通した競技力の試合への適用としました。以下には、それぞれのねらいに対応したプログラムの実施内容と成果について、ご報告いたします。

(1) 低強度およびHIITによる全身持久力の向上

志賀高原期間中には7日間のうち、低強度のみのセッションを6回、HIITのセッションを4回実施、運動様式は上り坂でのローラースキー、ポールウォークおよびジャンプ、ランニングと多様な様式を採用しました。9月7日には、ローラースキーのクラシカル走法にて、強度4(最高心拍数の87~92%、血中乳酸値4~6mmol/L相当)で6分×6セット、休息4分のHIITを実施し、最大酸素摂取量とレーススピードでのスキー技能の向上を図りました。

強度4のHIITに取り組む笠原将選手強度4のHIITに取り組む笠原将選手

9月9日には、ローラースキーのスケーティング走法にて、強度3(最高心拍数の82~87%、血中乳酸値2.5~4.0mmol/L相当)で15分×3セット、休息2分の閾値トレーニングを実施し、運動を続けられるスピード下での運動効率およびスキー技能の向上を図りました。9月10日には、ローラースキーのクラシカル走法にて、強度1(最高心拍数の60~72%、血中乳酸値<1.5mmol/L相当)で150分の低強度トレーニングを実施し、低強度運動による生理学的応答(毛細血管の拡張、酸化系酵素活性)を引き出すことを目的としました。

強度3の閾値トレーニングに取り組む小林選手強度3の閾値トレーニングに取り組む小林選手
強度1の低強度トレーニングに取り組む廣瀬崚選手強度1の低強度トレーニングに取り組む廣瀬崚選手

9月11日には、ポールジャンプにて強度5(最高心拍数の92~97%、血中乳酸値6.0~10.0mmol/L相当)で5分×6セット、休息4分のHIITを実施し、最大酸素摂取量の増加を狙いました。いずれのトレーニングにおいても、心拍数を測るなど強度のコントロールを行いながら、トレーニングの質を高める工夫をして取り組みました。

(2) 各種ドリルによる基礎運動能力の向上

9月7日には、トレーニング器具を用いずに実施できるアジリティドリルを20種類程度実施しました。前後、左右、斜め方向への素早いステッピングやステップの組み合わせ、外乱課題や全身反応課題を取り入れて、敏捷性や巧緻性を高めてスキー技能につながるようなプログラムを実施しました。自身の苦手なステップや左右差を見直すことで、基礎的な運動能力がスキー技能に影響している可能性を見い出し、コントロールするきっかけを探りました。

アジリティドリルで素早くステップを踏む小林萌子選手と笠原将選手アジリティドリルで素早くステップを踏む小林萌子選手と笠原将選手

9月12日にはスキーのフォーム修正につながる姿勢や動きのエクササイズと、スキーのフォームを模倣したイミテーションドリルを実施しました。四肢の先にある道具を使って滑走するクロスカントリースキーでは、脊柱や骨盤と体幹部の筋群、体幹部からつながる肩関節や股関節、さらには末端部の姿勢や動きを最適化し、道具を使ってより合理的に身体を移動させる技能が求められるため、一つ一つのドリルに丁寧に取り組むことで体の使い方を学びました。

(3) 高所での競技会に向けた順応のチェック

今合宿では、1週間の高所滞在、高所トレーニング中の疲労をチェックしながら、合宿を進めてきました。9月13日にはローラースキーのスケーティング走法にて7kmの上り坂のタイムトライアルを実施し、高所での競技会で体にかかる負荷を想定した練習を行いました。1週間の滞在とトレーニングによってかかる負荷は大きく、その後のローラースキー大会にも影響した感はありますが、そのような負荷が目標とするU23世界選手権でも蓄積する可能性があることを理解することで、コンディショニングに配慮しなければならないことを学ぶ機会となりました。今後は起床時の心拍数や血中酸素飽和度をチェックするなど、より緻密な日々のコンディションチェックに取り組みたいと思います。

(4) 競技会参加を通した競技力の試合への適用

9月13日には、合宿地を木島平村へと移し、2022全日本選抜木島平サマーノルディック大会に向けたトレーニングを行いました。9月14日(レース3日前)にはローラースキーのクラシカル走法でショートダッシュ(10秒×20セット)を取り入れて、上り坂に比べてスピードの出るローラースキーコースでのフォーム修正を行いました。9月15日(レース2日前)には、競技の行われるコースレイアウト(約3km)で強度5のレペティショントレーニングを行い、適切な走法の切り替えや戦術を確認するとともに、レーススピードに体が反応できているか(レースで発揮しなければならない運動強度まで体を追い込めているか)を確認しました。9月16日には(レース前日)には、再度ショートダッシュ(10秒×5~10セット)を行い、体の反応とフォームを確認しました。

男子10kmフリー種目にて、上り坂を疾走する笠原将選手男子10kmフリー種目にて、上り坂を疾走する笠原将選手

9月17日の大会1日目には、男子10kmフリー種目にて笠原選手が95位、女子7.5kmフリー種目にて小林選手が12位となりました。翌18日の大会2日目には、男子10kmクラシカル種目にて笠原選手が29位、女子7.5kmクラシカル種目にて小林選手が16位となりました。両日とも競技会の映像を確認しながら、練習で改善されつつあるフォームを試合に適応できているかについてフィードバックを行うとともに、コースの各地点で計測されたラップタイムを確認しながら、レースの出来栄えを評価しました。19日には男女各4kmの2022木島平サマーノルディックマラソン大会が行われ、これに参加しました。笠原選手は33位、小林選手は3位となりました。合宿のプログラムの一環として大会に参加しているため、疲労を溜めた状態ではあったものの、次につながる成果が得られたと思います。

女子7.5kmクラシカル種目にて、スタート直後に加速する小林萌子選手女子7.5kmクラシカル種目にて、スタート直後に加速する小林萌子選手

今合宿では、上記のプログラムを予定通りに完了することができ、次につながる成果が得られました。オフシーズンも終盤に差し掛かり、今後は来るシーズンに向けて着実なステップアップをし続けていくことが重要となります。U23を対象とした国内合宿は最後となり、今後は雪上トレーニングとレース参加を目的とした海外遠征を行っていきます。

依然として新型コロナウイルス感染症の影響を受けながら事業を実施しておりますが、本連盟の事業にご理解とご協力を頂き大変ありがとうございます。合宿にご協力を頂いきました宿泊先をはじめ関係者の皆様、大会を開催いただいた木島平村および木島平スキークラブの皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。

報告: クロスカントリーチーム U23担当 藤田 善也

運動の特性上、コンテンツ内にマスクを外している場面がございますが、当事業はSAJ感染対策ガイドラインのもとで実施しております。