競技

2015/03/26

【REPORT 第3次アルペンジュニア遠征(世界ジュニア選手権)】
来季大会へのステップとして世界との差を確認

派遣期間:2015年3月3日 〜 3月11日
引率コーチ:井上春樹(男子ジュニアチーム)、原田彦(女子チーム)

代表選手 性別 所属 西暦 カテゴリー 参加回数
小山 陽平 双葉高校 1998 U18 初出場
加藤 聖五 野沢温泉SC 1998 U18 初出場
安藤 麻 北照高校 1996 U18 3回目
荒井 美桜 富良野緑峰高校 1997 U18 初出場

 

RESULTS 女子GS 3/7 < スタート標高/645m・標高差/392m・ターン数/48/48 >

Rank Bib Name Year Nation Total Diff. Point
1 1 ORTLIEB Nina 1996 AUT 2:25.14   7.61
2 5 BRUNNER Stephanie 1994 AUT 2:25.31 0.17 8.76
3 19 GRENIER Valerie 1996 CAN 2:25.34 0.20 8.96
27 9 ANDO Asa 1996 JPN 2:28.46 3.32 30.03
45 39 ARAI Mio 1997 JPN 2:34.03 8.89 67.64

 

RESULTS 男子GS 3/8 < スタート標高/645m・標高差/392m・ターン数/47/45 >

Rank Bib Name Year Nation Total Time Diff. FIS Points
1 2 KRISTOFFERSEN Henrik 1994 NOR 2:23.37   6
2 1 MEILLARD Loic 1996 SUI 2:24.33 0.96 12.56
3 7 MONSEN Marcus 1995 NOR 2:24.53 1.16 13.93
57 76 KOYAMA Youhei 1998 JPN 2:36.87 13.5 98.28
109 KATO Seigo 1998 JPN DF 2

 

【レポート GS 】
 コース前半部分は左下がりの中緩斜面に大きな起伏が連続するスピード系の要素が多く含んだセクション。しっかり自体重をスキーのセンターに乗せ空気抵抗を最小限に抑える上半身の姿勢を保ったまま、柔軟な下半身での操作で起伏を攻略して行く選手が好タイムを出していた。気温が高く雪面硬化剤を撒いてのレースとなったものの極端にスタード順が影響するというほどでは無かった。日本人選手は2本上についたラインの溝や起伏に合わせる事が出来ず、スピードを運べないまま前半だけで大きくタイムを失う結果となった。

 中盤からは一気に急斜面に落ち込む斜面変化からスキーが浮く程度の夏道などが連続しゴールまで気を抜く箇所がないセクションだがテールをスライドさせて方向を決めるほどのターンはほとんどなく、2本のエッジでしっかり雪面を捉え、板のたわみの波長を止める事無くターンをつなぎながらスピードを運んで行く選手達が上位を占めた。後半部分も日本人選手は深いターンを取り過ぎたり、方向を決め過ぎたりと落下スピードを止めるスキー操作が目立ってしまった。日本国内には少ないウェーブや地形の捻れの攻略方法、長く引っ張るターンでのスキーの操作などを克服する為には、スピード系トレーニング環境の確保やスキークロスなどの導入を増やす事が必然とされるが、安全面も考慮しながら段階を踏んで進めなければならない。

 

大本命のクリストファーセンが地元開催でしっかり結果を残した。トップ10にノルウェー3名、イタリア4名と2国の活躍が目立った。女子はオーストリアの1、2フィニッシュ。3位〜5位はカナダ勢が占める結果となり、ジュニア強化の順調さを伺わせた

男子GS 57位 小山陽平選手(JPN/双葉高校)

男子GS 3位 M.MONSEN (NOR)

男子GS 2位 L.MEILLARD (SUI)

女子 GS 27位 安藤麻選手(JPN/北照高校)

女子GS 45位 荒井美桜(JPN/富良野緑峰高校)

女子GSはオーストリアの1、2フィニッシュ

 

 

RESULTS 女子SL 3/9 < スタート標高/430m・標高差/177m・ターン数/57/56 >

Rank Bib Name Year Nation Total Time Diff. FIS Points
1 1 MOLTZAN Paula 1994 USA 1:43.54   6.00
2 4 SCHMOTZ Marlene 1994 GER 1:44.19 0.65 10.52
3 5 TRUPPE Katharina 1996 AUT 1:44.53 0.99 12.88
41 41 ARAI Mio 1997 JPN 1:53.99 10.45 78.67
19 ANDO Asa 1996 JPN DF1

 

RESULTS 男子SL 3/9 < スタート標高/430m・標高差/177m・ターン数/53/61 >

Rank Bib Name Year Nation Total Time Diff. FIS Points
1 7 KRISTOFFERSEN Henrik 1994 NOR 1:37.55   6.00
2 2 SCHWARZ Marco 1995 AUT 1:39.10 1.55 17.44
3 1 GINNIS AJ 1994 USA 1:39.30 1.75 18.92
40 110 KATO Seigo 1998 JPN 1:46.98 9.43 75.6
92 KOYAMA Youhei 1998 JPN

 

【レポート SL 】
 コース前半は25ターンほど中斜面が続き、大きな斜面変化を越えてからの後半も中急斜面が続く。小さい起伏はあるものの比較的難易度は低いコースレイアウトだった為か、セッティングは振り幅のある難しいものが多かった。ゲートインターバルは平均10m〜10.5m、男子の2本目に限っては9m〜10mの細かいセットが立った。雪質は晴天で気温が高かった為、スタート順が多少影響する展開となったが下地も硬くこの時期としては実力差が明確に出るレース内容だった。

 日本の女子選手は振り幅の厳しいセットに苦戦し、バランスを崩してはスキーを止める操作になってしまった。特にゲート手前での運動が止まり、スキーの先端の方向が溝にフィットしないまま、ゲート通過後にブレーキをかけてしまうパターンが目立った。男子選手は加藤選手が110番ゼッケンから厳しいコース状況の中で40位まで順位を上げる健闘を見せるもタイム差は本人の想定以上であった。上位を占めた選手達はエッジの解放から加重までのスピードが素早く、スキーを雪面から離さない運動で完全にリズムを支配していた。

 スラロームにおいてはより洗練されたカービング技術と従来の基本的なスキー操作がしっかりと融合された技術が確立され、世界的に10代の選手のスラロームレベルはここ数年かなり上がっているという印象を受ける。また、セッティングも一定のリズムというセクションは減り、ヘアピンやストレートも様々なアレンジが見られる為、今後はあらゆるセットを想定しながらトレーニングに幅を持たせる必要性を感じた。

 

SLレースコース

地元の期待に応え圧勝したクリストファーセン

男子GSの夜に行われたチームイベントの様子(日本チーム不参加)

チームイベント(団体)トップ3カ国(1位/NOR 2位/AUT 3位/GER)

 

 

RESULTS 女子SG 3/10 < スタート標高/765m・標高差/495m・ターン数/33 >

Rank Bib Name Year Nation Total Time Diff. FIS Points
1 35 SOSIO Federica 1994 ITA 1:23.81   10.33
2 30 HOLTMANN Mina Fuerst 1995 NOR 1:24.02 0.21 13.04
3 2 KOPP Rahel 1994 SUI 1:24.11 0.30 14.2
48 62 ANDO Asa 1996 JPN 1:28.76 4.95 74.12

 

RESULTS 女子SC 3/10 < スタート標高/430m・標高差/177m・ゲート数/48 >

Rank Bib Name Year Nation Total Time Diff. FIS Points
1 2 KOPP Rahel 1994 SUI 2:08.54   19.26
2 7 MIRADOLI Romane 1994 FRA 2:08.90 0.36 22.48
3 30 HOLTMANN Mina Fuerst 1995 NOR 2:09.56 1.02 28.39
40 62 ANDO Asa 1996 JPN 2:17.02 8.48 95.13

 

【レポート SG/SC 】
 スーパーGのコースは序盤に大きな急斜面への落ち込みから起伏が連続する緩斜面を経てGSコースへとつながる。的確な斜面変化のライン取りとウェーブ処理が勝敗を分けた。コースコンディションは中盤までは良い状態を保たれたが後半は下から吹き上げる向かい風の影響でタイムに大きな影響を与えた。

 唯一参戦した女子の安藤選手は起伏で浮かされる場面が多くラインから外れてスキーを止めてしまいスピードに乗せ切れないままタイムを伸ばせなかった。スーパーコンビのスラロームは、スタート時間が午後14時を過ぎるタイミングとなり雪が緩んだ影響で後半スタートの安藤選手にも不利な状態になったが、やはり2本線上の溝に合わせられず不本意な滑りになってしまった。

 

 

【総評】
 1994年にリレハンメルオリンピックが開催された場所にて2015年の世界ジュニア選手権が開催された。季節的に春の陽気となったが、洗練されたコース作りと運営で過密なスケジュールではあったが順調に競技は進んだ。

 日本代表チームの男子は2名ともにFIS 1年目の選手が選抜された、他国はほとんどが1994年〜96年生まれが代表になっている中で上位に食い込むのは厳しい状況ではあったが、個々に世界レベルを肌で感じる事が出来た。今後ある4回の出場チャンスで是非今回の経験から飛躍して欲しい。女子は3度目の出場となった安藤選手は前回大会で15位に入っているだけにトップ10入りを目指したものの、苦手要素が多いコースに苦戦し悔しい結果となった。初出場となった荒井美桜選手は、多少雰囲気に飲み込まれてしまったものの両種目で完走を果たし、世界との距離を確認した。

 総合的には、スキー操作の技術的な違いと大会に対する心構えや準備に違いを感じた。上位に食い込んで来る選手達には共通して強い“気迫”を感じ勝つことに対する貪欲さが滑りにも出ていた。まだ10代で荒削りな選手も多かったがとにかく全身をフルに使いスキーを走らせようとしていた。また強豪国(オーストリア、スイス、フランス、イタリア、ノルウェー、カナダ)であればあるほどジュニアチームの環境整備を徹底して行っている。16歳〜20歳は肉体的にも人間的にも大きく変化を遂げる年代であることから熟練のコーチ、若手のコーチ、専門のトレーナー、サービスマンが一体となってしっかりと選手達をサポートし強化を図っている。競争率の高い欧州では、20歳までにある程度のレベル(ナショナルチーム)に達しない場合は現役を継続する事が困難になる為、激しいサバイバルの中で選手達が必死で戦っている。本当に強い選手はやはりそのような場所から這い上がって来るという事を強く感じた。

 今回参加したメンバーは幸いにもまだ世界ジュニアに数回以上参加出来る年齢である。今回の結果をしっかりと分析して来季ソチで行われる世界ジュニア選手権でのメダル獲得を目指す。

 

今後とも全日本アルペンスキーチームの応援宜しくお願い致します!